品行方正頭脳明晰容姿端麗文武両道用意周到、それからなんだ?とにかく古泉一樹という男は四文字熟語が似合う男である。それはもう嫌味なほど、というかあいつの存在自体がもう嫌味だ、嫌味!
心中で忌々しく思いながら、俺は古泉が作った飯を食っている。
メイン料理はアスパラガスとトマトの冷製パスタ、だそうだ。
「アスパラガスの緑にトマトの赤、ホタテの白と、彩りにも気をつけてみました」
イタリアンカラーですよ、と古泉。
「……この緑のはなんだ?」
「バジルソースです」
古泉が優雅にフォークを操りながらにこにこと語る。
「ちなみにトマトはフルーツトマトを使用しました。冷製なのでフルーツトマトのほうが甘味が引き立って美味しくなりますよね」
そんなことは知らん。
だが……確かに美味い。
食べる手が止まらない。こんちくしょう。
「パスタ料理は見栄えがするのがいいですよねぇ。比較的簡単でありながらすごく手が込んでいるかのように見えてお得です。手順を覚えてしまえばあなたでもすぐに作れますよ」
いや、多分無理。俺にこんな小洒落たもんが作れるか。たとえ作れるようになったとしても俺のキャラに合わんだろ。
パスタに使用して余ったアスパラガスにベーコンを巻いて、古泉がぱぱっと作っていたアスパラガスのベーコン巻きがこれまた美味い。俺の母親が作るやつより美味い、気がする。
「はは、まさか。ベーコンは塩気がありますので、僕は醤油で少し味を整えて焼いただけです。家庭の味――おふくろの味には到底敵いませんよ。多分普段と環境が違うから美味しく感じられるのでしょう」
へいへいそうですか。だが美味いのは事実だ。
まるでパンケーキのように丸く焼いた――フライパンに満遍なく広げて焼くから丸い形になるそうだ――ジャガイモときのこの入ったオムレツを古泉がケーキのように二等辺三角形の形に切り分けて小皿に乗せると俺の前に置いた。
……くそう、これもまた美味い。ジャガイモのしゃきしゃきの歯応えときのこの食感が絶妙なハーモニーを口の中で奏でている。
「具材をさいころ状に細かく刻み、卵で閉じて焼いただけですよ。味付けは塩コショウだけですので、味が薄かったらお醤油をお出ししますが?」
いや、醤油はいらん。丁度いい。
バクバク食べる俺に、
「おかわりありますから」
「おう」
他の料理で残った具材――ジャガイモやきのこなど――とタマネギニンジンピーマンとソーセージが入ったコンソメ仕立ての野菜スープも美味い。
古泉はこれらの料理を小一時間くらいで作り終え、温かいものは温かいままで俺の前に並べて見せた。
顔もよくて勉強もできてスポーツも得意で、料理までできるだと?しかも初めて訪れたこいつの部屋はまるでモデルルームかっていうくらい綺麗に片付けられている。ものがない綺麗さじゃない、普段からきちんと整理整頓掃除をしている綺麗さだ。そういうのは見ればわかるもんだ。こいつ、料理だけでなく、他の家事全般もお得意か。なんだこの完璧人間。くそ、忌々しい。
出された数学の課題がさっぱり解けず、部室で古泉に勉強を見てもらったが終わらず自宅まで押しかけ課題に付き合ってもらって、その結果夕食時の時間になってしまったからと夕飯をご馳走になった俺が言っていいことじゃあないかもしれんが、忌々しすぎる!お前は男の敵だ、男の敵!
恨めしくじとりとねめつければ、古泉は俺の気など知らず、にこにこと嬉しそうに食事をしている。
何がそんなに楽しいんだ。
「いえ、普段は僕一人ですから。夕食を誰かと取るのは久しぶりです」
「…………」
「料理はいつ何時にどんな注文を涼宮さんにされても完璧に応えるためにと色々訓練をした成果の一つですが、このまま披露することなく終わるかもしれなかった技能をこうしてあなたに披露できてなおかつ美味しいと言っていただけたのですから、楽しいし、嬉しいですよ」
一緒にご飯を食べる人がいるっていうのはいいですねぇ、と古泉ははにかむように笑った。
「…………シチュー」
「はい?」
「……シチューは、」
作れるか。
「ええ、はい。作れます、よ?」
「じゃあ次」
次はシチュー食わせろ。
ぽかんと小さく口を開けて俺を見てくる古泉を無視して俺はフォークにぐるぐるとパスタを巻きつける。
「――了解しました。次は、シチューですね」
パスタを頬張りながらちらりと古泉を窺えば、周囲に花を飛ばしてるんじゃないかっていうほわほわした顔をしていた。
ええい、身長が百八十近い男が花を飛ばすな!はにかむな!気色悪い!
・・・・・・・・・
(同人界では料理できない掃除できないいっちゃんがわりとデフォっぽく語られているので、料理できるいっちゃんを目指してみたんですがどうでしょうか…。アスパラとトマトの冷製パスタは5/31にやっていた芸能人が料理を作る番組でかなめ/じゅんさんが作っていたものの名前を勝手に拝借しました。美味しそうだったのです…。オムレツは以前友達が作ってくれたものから。(ジャガイモときのこしか具材覚えていないんですが他に何か入ってたっけ??)とにかく大変美味しかった!)
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