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略して「バタフライ効果」。男子団員二人中心のテキストを取り扱っています。
Posted by - 2026.06.11,Thu
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Posted by バタフライ効果 - 2008.06.04,Wed

 僕らは想いを告げない。
 僕らは手を繋がない。
 僕らはキスをしない。
 僕らは――、

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[僕らは手を繋ぐことすらうまくできない。]
 
 
 
「温暖化、砂漠化、食糧難、戦争、環境汚染、資源の枯渇」
「突然どうしましたか?」
「わからないか?」
「……社会科の勉強ですか?」
「お前、世界を守るヒーローなんだろ?」
「……――そうあれれば、と思っていますが」
「じゃあ、まず手始めに植林からだな」
「は?」
「今すぐ戦争やめさせろなんて無茶は言わないぜ。百年計画でいこう」
「えっと、あの…?」
「できることから地道に、こつこつと、やっていこうって言ってんだよ」
「だから、あの、なんのことですか?」
 ピ、と彼の指がリモコンのボタンを押してエアコンを切った。
「お前はまず二酸化炭素の排出を抑えろ」
 暑いならエアコンよりまず先に窓を開けろ、寒いなら一枚着るものを増やせ。
「お前の神様がご機嫌斜めにならなくたって世界はいつだって危機的状況だ」
 僕は大真面目に語る彼に「はぁ」という間抜けな返答しかできなかった。
 涼宮ハルヒが発生させる閉鎖空間とその中で暴れる神人とでは比べようもないだろうに。
 けれど、そうだ。
 別に彼女の力が発現しなくたって世界は崩壊するのだ。
「……まずは、植林、ですか」
「そうだ」
「では僕はいつかこの任務から解放されたら砂漠に緑を増やす研究をしましょう」
「それいいな。ただのサラリーマンになったって宝の持ち腐れになるだろうお前の大層ご立派な理系の頭脳が世の役に立つようなる。そうしろ」
「そうなったらもちろん、あなたも一緒に行ってくれますよね?」
「悪いが俺はお前と違ってヒーローじゃないぜ」
「神人を狩る力がなくても、手があれば苗木は植えられますよ」
「……――そうか」
「そうですよ」
「そうか」
「そうです」
 強く頷いた僕に彼は笑った。笑おうとした。だが無理に笑おうとしたせいで彼の顔は歪み、口角を持ち上げようとして失敗した唇の端が震えた。
 僕には絶対口にしてはいけない言葉がある。
 彼にも、僕と同じ言葉が言えない理由がある。
 世界を守る、なんてただ言い訳だ。
 僕も彼も臆病で小心だっただけだ。
 それなのに、それでも、僕らは約束せずにはいられなかった。
 けれどそれは夢とか将来なんてそんな甘いものじゃない。
 言ってはいけないし、言えない。
 言いたくて、でも絶対言わない。
 そして言い訳を探しては自分たちに言い聞かせる。
 世界の危機は神様の癇癪だけじゃない。
 神様の癇癪以外でも世界は崩壊する。
 他愛のない、戯言だ。
 けれど僕らには戯言が必要だった。
 何かを堪えるために握り締めて関節が白く浮いた彼の手の甲を包みように自分の手のひらを重ねる。
 彼のこげ茶色の目が揺れた。揺らすのは僕だ。
 今にも泣いてしまうのではないかと思わせる彼の目を見たまま僕は何も言わず、彼も僕の醜く歪んでいるだろう下手な笑い顔に何も言わず。
 互いの目を覗き込んだまま額を触れ合わせた。
 世界の危機は神様の癇癪だけじゃない。
 けれど神様の癇癪でこの世界は崩壊するかもしれない。
 こんなに近くにいるというのに僕らはギリギリの境界線を測ってそこで踏み止まる。
 世界の危機は神様の癇癪だけじゃない。
 けれど神様の癇癪でこの世界は崩壊するかもしれない。
 境界を越えることは絶対しないから、せめてこれくらいは見逃してほしいと許しを乞い続けている。
 世界の危機は神様の癇癪だけじゃない。
 けれど神様の癇癪でこの世界は――……。
 
 
 
 どうか、僕らの想いが、この世界を壊したりしませんように。
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