略して「バタフライ効果」。男子団員二人中心のテキストを取り扱っています。
Posted by バタフライ効果 - 2008.06.21,Sat
「神は何ものにも応えないものですよ」
誰の願いも、聞き入れない。
「当然です。神などという超越した存在が人間なんて矮小な存在を気にかけるとは思えません。鳥が何と鳴いているのかわかりますか?水槽の中の魚は何を思っているんでしょう?僕にはわかりません。また僕たちの考えも彼ら側に伝わるわけがないんです。種が違えば意思も疎通の仕方も違って当たり前ですから。そもそも彼らに僕らのような思考というものを持ち合わせているのかすら不明です。伝わらないのは当然ですね。さて、神に人間の言葉が伝わるでしょうか?その反対は?もし伝わったとしても意味までは通じないんじゃないでしょうか。僕たちに計り知れるわけがないんです。蟻に象の全体像が把握できないように」
古泉が勝手に議題を打ちたて勝手に議論を進めていく。
「神に博愛の精神を求めるなら、僕たち人間も蛆虫も平等です。だったら尚更、祈りなんか届くわけないんです」
自己主張を繰り返す声という数え切れないほどたくさんの雑音、それを一つ一つ拾い上げて聞いていたとしても、その願いを聞き入れて叶えてやらなければならない理由は神にはないでしょう。なぜなら神には自分の被造物の不平不満をどうにかしてやる義理はないのです。
「争い諍い、奪い合う。誰もが生きることに貪欲です。いえ、違いますね、これらの争いの大半は生存本能による生存競争ですらない。欲による戦争です。なぜ神はそういう風に生物を創ったのでしょうね。こんな僕たちに神の声は聞こえないでしょう。神に、僕たちの声も届かないでしょう」
俺は相槌を打ってやるのも面倒くさくて古泉がべらべらと喋るに任せて聞き流していた。
そもそも古泉は俺の返答など期待しちゃいないんだ、それなのに答えたって古泉は俺の言葉など聞きやしないだろう。だったら聞き流すに限る。
「けれど僕の神にはこの声が届いてしまう」
だって彼女は僕たちと同じ耳を持っているのですから。
俺は顔を動かすのも億劫で、ちらりと視線だけを古泉に向けた。どうやら演説は佳境、ようやく締めに入るようだ。
「だから僕は何も言いませんよ。たとえあなたが何に気づいていようと、僕はあなたの名前さえ、絶対に呼びません」
古泉が笑う。
完璧と言って差し支えない美しい笑みだった。
古泉、俺も何も言わないよ。どうせ俺の言葉はお前の耳に届きやしないんだからな。
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