古泉一樹という男を含め機関とはアスファルトに引かれた白線の上を歩き、そこからはみ出したら死ぬと常々思っているようなものだと思う。
白線以外の灰色のアスファルトは崖っぷちで、毎日命綱もなしに綱渡りをしている。
「まるでピエロだな」
「自分が道化である自覚はありますよ」
にっこり。必殺ハンサムスマイル。
ブラウン管の向こう側のアイドルが、さも見ている視聴者ただ一人に向けて微笑んだかのような錯覚を感じさせるような完璧なカメラ目線。だが残念だったな、俺はカメラじゃないし、お前の笑顔なんて路傍の石と等価値だ。目新しくもなければ感慨もない。
「それならピエロはピエロらしく振舞って観客を笑わせていればいいものを」
「ははは」
まったく感情のこもらない言葉を吐き捨てる俺に、古泉もまったくどうでもいいような笑みのまま笑ってみせる。
「そういえば――」
と、古泉が話題を切り替えた。どうでもいい話はどうでもよさそうに流れ話題は転換。
はてさて、俺と古泉との会話で実りのある会話などいくつあったか。大半は俺と古泉の会話なんて喜劇だろうよ。まったく、馬鹿らしい話をステージの上で滑稽なほど真剣に話し合っているその姿を観客たちは笑っているに違いない。
果たしていつまでこの喜劇は続くのか。俺も古泉も演じ疲れてきていい頃合いだろうだろうに。さっさと幕を下ろして閉幕といきたいものだ。
白線から足を踏み外せば空中から地面へまっさかさま?あほらしい。
滑稽なほど真剣に、恐ろしいほど慎重に白線の上を歩こうとするあいつを俺は鼻で笑う。
白線から一歩、さっさと足を踏み外してしまえばいいんだ。
知ってたか、そこには俺が歩いている地面がちゃんとあるんだぜ?
[タイトロープ]
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