略して「バタフライ効果」。男子団員二人中心のテキストを取り扱っています。
Posted by バタフライ効果 - 2009.07.05,Sun
「この時期はゼリーが食べたくなるんですよねぇ。というわけでゼリーを作ります」
「何がというわけで、だ」
「いいでしょう、というわけで。物語じゃないんですから人の行動にいちいち起承転結を求めないでください。そもそも、別にあなたに作ってくださいと頼んだわけでもなし。僕が食べるのですから僕が自分で作ります」
「当たり前だ」
「というわけで、あなたの分はありませんよ」
「はぁ?」
「……そこで、さも自分の分も作るのが当然、みたいな反応しないでくださいます?まるで僕が間違っているみたいじゃないですか」
「間違ってるだろ。このノリでいったら当然俺の分も作るべきだろ」
「……何がどこに掛かって“べき”なのかはあえて聞きませんが。そうですねぇ、僕は僕で僕の分を作りますから、あなたはあなたであなたの分を作りましょう」
「……俺はゼリーなんぞ作ったことないぞ」
「おや、初体験ですか」
「……なんか嫌な言い方だな、言い直せ」
「言い直しても同じですよ。初体験は初体験です。いいじゃないですか、何事にも初体験は付き物です」
「……」
「初体験と言っても、ゼリーを作るのは簡単ですので、痛いと思う暇もなくさくっと終わってしまいますから、心配は無用ですよ」
「細かくツッコみたいところだが…。ええい、さっさと始めるぞ!」
「はい。ではまずゼラチンを用意します。ここでは一般的なゼ/ラ/イ/スを使用します。一袋5gで250~300ccが固まります」
「これをどうするんだ?」
「できるだけ洗い物を出したくないので、ボウルタイプの耐熱皿を用意します」
「これか?」
「今ボウルタイプって言ったと思いますが?それは平のスクエアじゃないですか。そっちじゃなくてこっちの、丸いほうです」
「思ったより重いな…」
「耐熱皿ですからね。厚みもあって重さもありますが、あると便利なんですよ」
「そうなのか?」
「ええ、電子レンジで大活躍。オーブン機能でも使えますから」
「へぇー」
「ではボウルタイプの耐熱皿にゼラチンを開けます」
「開けたぞ」
「ゼ/ラ/イ/スの説明書では50ccの熱湯にゼラチンを振りかけて溶かすように書いてありますが」
「おい、お湯の前に入れちまったぞ?」
「いいんですよ。耐熱皿に入れたゼラチンの上に振りかけるように水を50cc入れます」
「水?熱湯じゃなくて?」
「ええ、水です。散々ゼリーを作ってきましたが、僕はあの説明書にあるやり方は気に食わないんですよ」
「なんで」
「熱湯にゼラチンを振りかけても、ゼラチンに熱湯を振りかけても、かなりの確立でゼラチンがダマになるからです」
「ダマ?」
「そうです、ダマです。ゼラチンっていうのはコラーゲンなんですが、説明書に書いてあるとおりにやると上手く溶けないんです。僕だけかもしれませんが」
「で?俺はこのゼラチンに水をかけていいのか?」
「あ、均等に、ゼラチンに満遍なく水を含ませるようにかけてくださいね」
「わかった。……これでいいか?」
「いいですよ。そして少し置きます」
「置いとくのか?」
「はい」
「なんで?」
「ゼラチンをふやかすんです」
「ふやかすって…――あ」
「水を含んだゼラチンが膨れましたね?」
「おお。すげー皿ひっくり返しても落ちてこない」
「ではこれを電子レンジで加熱します」
「は?」
「ゼラチン溶かさないとジュースと混ぜられないでしょうが」
「いやそうだが。ここにジュース入れるんじゃ駄目なのか?」
「駄目ですよ。ゼラチンは溶けたあとは冷やさないと固まりませんが、この状態ではジュースに混ざりませんし、見た目からしてこのゼラチンはザラザラしてそうでしょう?」
「…そうだな。で、電子レンジ?」
「だいたい500wで30秒くらい加熱するのですが、電子レンジの種類によって微妙に違うと思いますので、最初に20秒加熱してから後はゼラチンが溶けたかどうかを確認しながら10秒ずつ足していってください」
「おし、電子レンジ投入!」
「どうですか?」
「おー。溶けた溶けた」
「固まっていたりしませんか?」
「綺麗に全部液体になってるぜ」
「ではそこにジュースを100cc入れます」
「何でもいいか?」
「ええ」
「んじゃ、オレンジジュースっと。――入れたぞ」
「ゼラチンとジュースを混ぜたら、そこに砂糖をすりきりで大さじ一、二杯くらいを入れます」
「すりきり?」
「大さじに砂糖をすくって、上を平らになるように余計な砂糖を落としてください」
「……どうやって」
「その大さじ中さじ小さじの他に一つ平らのやつが付いてるでしょう?」
「あ、これって何だよ」
「すりきったり、たとえば大さじの半分となったときに半分にするためのものです」
「なるほど。これで、削る、と」
「よくできました。まぁ、砂糖はお好みで適当に加減して問題ないので、適当に増減して入れてくださって結構なんですけどね」
「…古泉。お前、自分は目分量か…」
「砂糖の量は説明書にある量でいいと思いますよ。まあだいたい30gくらいでしょうか。甘いジュースの場合は僕は大さじ一杯でいいくらいでいいと思いますが」
「といいつつお前はオレンジジュースで約大さじ一杯か」
「手作りのいいところは自分の好みで甘さなどの調節が利くところですよねぇ。さて、砂糖を入れて混ぜたらまた電子レンジでだいたい30秒くらい加熱します」
「またか」
「砂糖の溶け残りをなくすために暖めるのが目的なので、適当に、加熱しすぎないように、暖めてください」
「ザリザリ言わなければいいんだな。じゃあ30秒、っと」
「あとは残りのジュース150ccを入れて混ぜたら終わりです」
「早っ。もう終わりか」
「ええ。あとは冷蔵庫で2時間ほど冷やしたら出来上がりです。ジュースを100ccと150ccを分けて入れたからほとんど冷めているので、冷ます時間も必要なくてすぐに冷蔵庫に入れられます」
「あ、確かに洗い物が軽量カップとスプーンだけだな」
「でしょう。これをジュースを鍋に入れて火にかけて暖めたりすると一気に洗い物が増えるんですよねぇ」
「と言いつつ、お前結構洗い物好きだろうが」
「好きなことと、洗い物を減らすことは別の問題です。洗い物はできるだけ少なく!これは鉄則です」
「何の」
「僕の、ですよ。皿に限らず、自分が洗わないからって何も考えないで洗い物をポンポン出す人間は主婦から突然ラリアットを食らわせられても反論する権利はありません」
「何だそりゃ」
「あなたは女性にお優しいですが、主婦と妊婦にはことのほか親切にすることをお勧めしますよ。世界平和のためにも」
「世界平和…」
「僕、昔流れていた美容整形のCMが結構好きだったんですよねぇ」
「――私の鼻があと少し高ければ――だったか?」
「ええ。あれは心理ですよね。あと少し自分の顔がどうにかなったら、自分に不満がなかったら、自分をもう少し好きになれる、そうなることで他人に対して優しくなれる、ということだと思うんですよ」
「それが世界平和か」
「争いなんてちっぽけな不満が引き金になったりするでしょう?」
「……まぁな」
「さて、ゼリーが固まるのにはもう少し時間がかかりますから、何しましょうか」
「……。まずはこの少ないが洗い物を俺が片付けてやろう」
「おや、どういった風の吹き回しですか?」
「別に。他人に少し優しく――それが世界平和の秘訣なんだろう?」
「――ええ、はい。では洗い物お願いしますね」
「おう」
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